【はんだ付け名人への道】はんだ付け練習キットを購入して表面実装の技術を磨いてみた
はじめに
電気製品を扱うエンジニアにとって『はんだ付け』は、ものづくりの現場において重要な技術だと思います。しかし、メーカーに就職しても練習の場が提供されるのは稀で、各々がOJTを通じて先輩社員の技術を盗んだり、基板や部品を壊しながら身に着けているのが現実のように見受けられます。
そこで今回は、Amazonではんだ付け練習キットを購入したので製品と一連の実装→検査の流れ、忘備録を兼ねてtipsを紹介しようと思います。
工具については色々なサイトで紹介されているので省略します。調節可能なはんだこて、フラックス、ケミカルペーストは必須で、こて先は面実装ではマイナスドライバのようなD型がお気に入り。よくデフォルトで付属される円錐型は面実装に不向きだと思います。
購入した練習キットについて
Amazon.co.jp: はんだ 練習 LEDモジュール 電子工作キット電子プロダクションスイート DIYキット 溶接練習ボード : 産業・研究開発用品
Amzonで898円で購入しました。評価は☆2.7とあまり高くないですね。
レビューを見ると中級~上級者向きというコメントが散見されました。
確かに誰もが最初はユニバーサル基板でリード線付きの物から始めるのが大半ですが、実際の製品では大半が表面実装なので業界的には初心者~中級者くらいかと思います。
現場では0603とかざらに使われていますが、このキットで使用する最小が1608ですし、部品間の距離も大分離れていてお膳立てされていますしね。
回路図や部品情報は一切なし!情報はAmazonのページを見れば分かるやろ?というストロングスタイルでした。
確かに画像と照らし合わせれば実装に問題ないけど、汎用部品を使っているんだろうからせめてドキュメントくらい用意するのが筋では…
パターン図が落ちていましたが、部品ブロック毎に独立しているのね…連動しないんだ...
チップ抵抗(2012) 100Ω×20本ノック (難易度:★☆☆☆☆)
こての温度を340~350℃程度に調整したら、まずは下図赤線の範囲内に抵抗をひたすら半田付けしていきます。これ以上高温にしすぎると酸化が進みやすくなるので止めたほうが良いです。"0805"と基板のシルク印刷がありますが、これはインチ表記なのでミリ表記に直すと2012 (2.0mm×1.2mm)になります。
そこそこ綺麗に付けられたんじゃないかと思います。
100Ω抵抗 20個が全て直列に接続されているため、J1-J2間の抵抗は2kΩです。
テスターで測定して理論値通りになったので、品質はともかく正常にはんだ付けできたことが確認できました。
このようなチップ部品をはんだ付けするコツは下記の2点だと思います。
①フラックスをランドに事前に塗布してはんだが拡がりやすいように準備する
②予めはんだを片側に盛って、部品を基板面に這わせながら結合!
ピカピカの綺麗な濡れあがりができた時は気持ち良いです。
チップ容量(2012) 1uF×20本ノック (難易度:★☆☆☆☆)
次に、20個のコンデンサ1uFを並列接続させます。合計容量が20uFになれば成功です。要領は抵抗と同じですが抵抗よりも背が高いため、濡れあがりに必要なはんだ量は多くなります。多めにはんだをマシマシで盛る必要があります。
実測値が抵抗に比べて大きいですが、積層セラミックコンデンサ(MLCC)は測定条件によって測定静電容量の公称値が変動しやすのでこんなところでしょうか。少なくともはんだ付けは正常に行えたことは確認できました。
チップ抵抗(1608) 100Ω×20本ノック (難易度:★☆☆☆☆)
サイズが変わりまして1608(1.6mm×0.8mm)抵抗のはんだ付けです。1005ほどではないですが、電子機器によく使用されます。顕微鏡いらずなので難易度は★1(易しい)です。顕微鏡が欲しくなってくる1005で★2(ちょいムズ)、0603で★3(ムズい)の難易度だと思います。
100Ωを20個直列させた合成抵抗値なので2kΩになるはずです。
J5-J6間の実測値1.965kΩなので正常にはんだ付けができたようです。
チップ容量(1608) 1uF×20本ノック (難易度:★☆☆☆☆)
サイズは同じ1608です。
こちらも並列接続の合成容量20uFですが、こちらは実測値が近しいですね。
ムラがありますね。背が高めだと濡れあがりが難しいです。
チップアレイ抵抗 1kΩ×6本 (難易度:★★★☆☆)
個人的に一番難しく感じるのがこのチップアレイ。電極が小さい上に短い。隣の電極とショートしやすいのでフラックスを使わないと困難です。
チップアレイ抵抗は下図のように4つの抵抗を内部に含んでいるアレイ構造になっています。4ラインの合成抵抗はそれぞれ6kΩになるはずです。実測値より正しくはんだ付けができたようです。一回ですんなりいかず、細かく測定しながら原因の箇所を突き止めて修正することでpassできました。フラックス使わないと私は無理です。
後、このような大きくて極数が多い部品は下図のようにカプトンテープで固定することにより、ズレが発生せずに安定してはんだ付けが行えます。上手い人はいちいちテープで固定せずに行えるのですが、大雑把な私にはこの工程が必要です。
バイポーラトランジスタ 3個×2か所 (難易度:★☆☆☆☆)
バイポーラトランジスタ(BJT)が合計6か所あります。
余りミスの発生しない箇所です。ランドも大きいし、電極間が離れているので楽です。
下にあるタッチポイントと各トランジスタの電極間が導通していればOKです。
ダイオード 3個×2か所 (難易度:★☆☆☆☆)
ダイオードを10個付けます。ダイオードにはアノード、カソードの極性があることに注意が必要です。黒い線がある方がカソードになります。
データシートがありませんが、Amazonの説明文を読む限り順電圧方向の電圧降下は約2.72Vとのことです。測定条件(主に電流値)によって実測値も変動するので精度はこの程度ですかね。はんだ付けは正常に行えています。
謎の IC×2個 (難易度:★★☆☆☆)
素性の分からない謎のIC2個を実装します。
①カプトンテープでしっかり固定
②対角に位置する電極を最初にはんだ付けして固定
この手順を踏めば失敗する確率が減ります。
残念ながらテスト方法はチップの足と外側の電極間の導通チェックしかないです。
謎の LQFPパッケージIC×2個 (難易度:★★★☆☆)
こちらも下記の手順です。
①カプトンテープでしっかり固定
②対角に位置する電極を最初にはんだ付けして固定
ただ、こちらのパッケージはピッチ約0.5mmなので①は慎重に行う必要があります。
テストはこちらもピンと外側の電極間が導通できているか1本1本チェックする必要があります。もっとスマートに検査できる仕組みがあったら嬉しいな…
当然フラックスを使います。使わないと私にはとても無理です。フラックスリムーバも使用して綺麗に出来上がったのではないかと思います。
はんだこてで外すのは非常に困難です。低融点はんだで素早く手を動かして外している動画を見たことがありますが、まだチャレンジしたことがありません。はんだを盛ってブロアー(ヒートガン)と呼ばれる熱風を出す工具を使って外す方法が一般的です。極力避けたい作業ですね。
まとめと感想
以上ではんだ付けが終わりました。大雑把な私ですが、それなりに集中したのでそれなりな出来栄えになりました。
結果として良い練習になりましたが、最後に全体のブロックが連動して視覚的に楽しませてくれるギミックみたいなものが欲しかったです。
紹介したもののそこまで推せない練習キットなので、もっと良い練習キットがあれば是非コメント欄で教えていただけると幸いです。